探偵の調査は調査対象にバレないことが大原則です。浮気調査をしているのに調査対象である夫や妻にバレてしまっては、調査対象が調査期間は浮気相手との密会を慎み、まったく浮気の証拠など手にできなくなってしまうことでしょう。調査対象になぜ自分を調査するのか、プライバシーの侵害ではないかとクレームを入れられる可能性もあります。
この「プライバシーの問題」は、浮気調査において大きな問題になります。いくら浮気をしていると疑わしい相手であっても、勝手に身辺を調査してしまって大丈夫なのでしょうか。調査結果を法廷で使おうとしても、プライバシーの侵害だと指摘されないでしょうか。本人の知らない間に身辺を調査した証拠など違法だと指摘されないでしょうか。慰謝料請求や離婚のための証拠として使おうと考えている人にとってこの点は重要な問題です。
探偵会社はどんな依頼でも受けてくれるのでしょうか。調査対象のプライバシーや違法調査への対処はどうなっているのでしょうか。初めて探偵に依頼する際に気になるポイントをまとめました。
■探偵会社の調査!プライバシーや法律は大丈夫?
結論からいうと、探偵会社に依頼して身辺調査をしてもらうことがただちに違法になるわけではありません。調査内容にもよりますし、調査対象にもよります。また、調査方法にもよりますので、探偵会社が調査対象について浮気の証拠を得るために調査をすることが即座にプライバシーの侵害と判断されるわけでもありません。
きちんとした探偵会社は「調査対象のプライバシー侵害」と「調査を依頼した人の依頼内容に真実性がある」「調査依頼をすることや調査結果の使用に妥当性がある」など、依頼人と依頼内容の確認も行います。その上で調査を行います。どんな依頼も一つ返事で受けるというわけではありません。また、探偵会社であっても調べることのできない情報があります。探偵会社でも調べることのできない情報を調査して欲しいという依頼は、きちんとした探偵会社では受けません。
近年、探偵に情報集めを依頼し、その情報を使ってのストーカー行為が実際にありました。中には殺人事件に発展した事件もあります。探偵会社が依頼を受けるかどうかを判断する視点は一昔前よりかなり厳しくなっているのが現状です。
■「犯罪性のあるもの」「個人情報の取得」は基本的に管轄外
では、具体的にどんな依頼なら探偵会社は受けてくれて、どんな依頼は受けてくれないのでしょうか。ここで、具体例を二つご紹介しましょう。それぞれの依頼を探偵会社が受けるかどうか考えてみてください。
①
勤め先の店によく品物を買いにくる女性が気になっています。先日、スマートフォンで女性の横顔を隠し撮りしました。この写真をもとに女性がどこの誰だか調べていただきたいのです。調査結果は、この女性に交際を申し込むために使います。交際を断られたら、何度も女性の自宅に足を運んででも交際をお願いするつもりです。ちなみに、現時点で女性とは赤の他人で、名前すら知りません。
②
知り合いに陰口を言われていることを知りました。銀行の取引履歴とカード明細を調査していただきたいのです。目的は復讐です。
皆さんは2つの依頼についてどう考えますか。探偵会社は引き受けると考えますか?
答えはNOです。探偵会社はプライバシー配慮という観点や法律から、「犯罪に繋がる可能性のある調査」「金融機関や公的機関の有する個人情報の調査」はできません。前者の代表例が、違法な行為による復讐やストーカー行為などが考えられる場合です。後者の代表例は、公的機関が保有する戸籍の調査や金融機関の取引履歴の調査などです。
依頼を受ける際は「誰を調査するのか」「どんな目的で」「どんな情報を欲しているのか」「調べられる情報なのか」を厳しくチェックします。調査対象と依頼人との関係も確認しますし、調査内容をどんなことに使うのかも依頼人に確認します。調査においては調査対象のプライバシーに配慮し法律も順守する必要があるため、相談の段階で「できること」と「できないこと」をはっきりと答えます。
探偵会社は「誰に」「どんな目的で」「どんな情報を欲しているのか」を確認し、その依頼に真実性と妥当性が感じられなければ依頼を受けません。また、いかに真実性や妥当性を感じたとしても、個人情報保護の観点や法律からどうしても調べることのできない情報もあります。ですから、「調べられる情報なのか」という条件も必要になるのです。この4つがそろってはじめて「依頼を受けます」という契約の話になります。きちんと探偵業務に取り組んでいる探偵会社ほど厳しい視点を持っています。
■違法な依頼を受けてくれる探偵会社もあるの?
中には悪質な探偵会社も存在します。どんな目的で調査内容を使うのか、本当に調査対象と依頼人は依頼人が話した通りの関係であるのかを確認せずに調査をするような探偵会社もあります。調査においても、違法な調査や過激な調査をする探偵会社もあります。違法なルートで本来は入手できない公的な機関や金融機関からの個人情報を入手しようと試みる探偵会社もあります。中には「何でも引き受けます」と答えて依頼を受け、着手金だけ手にして連絡が取れなくなるような探偵会社もあります。
きちんとした探偵会社が依頼を引き受ける時は、依頼人の依頼内容を厳しくチェックします。同様に、依頼者側も探偵会社が悪質な業者ではないか、厳しい目でチェックすることが必要です。
・どんな方法で調査を行っているのか
・調査対象のプライバシーにどのように配慮しているのか
以上の2点は確認しておきましょう。また、探偵会社側から依頼内容の確認や調査対象との関係の確認を厳重に行われた場合は、真実性や妥当性を証明するためにもしっかり応じてください。嘘をつく必要はありません。緊張する必要もありません。「夫の浮気を調査したい。私は妻です。調査結果は慰謝料請求の証拠として使います」と、真実をはっきり伝えれば問題ありません。
■最後に
探偵会社に依頼すれば何でも調査してもらえるというわけではありません。法律や個人情報保護の観点、そして犯罪の防止という観点から、探偵会社でも依頼を受けられないことがあります。対象の調査においても個人のプライバシーや法律は守る必要があります。
探偵の調査がただちに違法やプライバシー侵害となるわけではありません。しかし、調査が違法とならないように探偵会社側も依頼を受ける段階で気をつけると共に、プライバシーの侵害にならないように調査内容も重々注意しなければいけません。多くの探偵会社はその点も留意して依頼を受けていますので、心配する必要はありません。依頼を検討なさっている方は、探偵会社を厳しい目で見て、依頼するかどうかを決めることも重要です。