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「赤」という言葉があります。ご存知のように、これは色の名前です。赤は色の中でも有名なものです。
信号機にも使われています。この色の名前を耳にした瞬間にほとんどの人は同じ色を思い浮かべることでしょう。
しかしこの「赤」、他にも似たような意味の言葉がたくさんあることをご存じでしょうか。
「朱」「紅」「臙脂」「茜」「緋」。「赤」と似たような言葉はたくさんあります。
皆さんはこれらの言葉を目にした時も、赤色を思い浮かべるのではないでしょうか。
ニュアンスや微妙な色差で使い分けられるこれらの言葉を耳にすると「日本語は難しい」「奥が深い」と思ってしまいますね。
そんな奥深い日本語で、異性に対する移り気や、異性が原因となる夫婦や恋人の裏切りを「浮気」といいます。
同時に「不倫」という言葉も使います。皆さんはこの二つの言葉を意識して使い分けしているでしょうか。
「赤」のように色調やニュアンス、文意で使い分けるような言葉なのでしょうか。それともこの二つの言葉には明確な境界線があるのでしょうか。
「浮気」と「不倫」の意味の違いについて解説します。
浮気の知識!二つの言葉に違いはある?
そもそも、「浮気」と「不倫」に意味の違いはあるのでしょうか。
この二つは、「恋愛関係にある男女のうち片方が自分のパートナー以外に走る」という裏切り行為に該当します。
女性が恋人以外の男性に気持ちを移してしまった時や、男性が恋人以外の女性とデートした時などに使われます。
例えばAさんがBさんとつき合っていて、Cさんと二股をかけていたといった場合にも使います。
これらの場合には、不倫を使っても問題ない気がしますし、浮気という言葉を使っても、もちろんしっくりきます。
「自分の恋人以外の異性に走ること」を指すわけですから、浮気と不倫のどちらを使ってもいいような気がしますね。
ニュースを見ていても、同じ事例に対し浮気という言葉が使われたり、不倫という言葉が使われたりと、まちまちです。しかし、この二つには多少の意味の違いがあります。
浮気と不倫について!事例で考えてみよう
意味の違いを具体例で考えてみましょう。次の事例①と②ではどちらが不倫でしょうか。また、どちらが浮気でしょうか。
事例を見てどちらの言葉がより当てはまりそうか考えてみてください。
事例①
AさんとBさんはつき合っていました。とても仲の良いカップルでした。
しかしAさんはCさんという好みの女性を見つけ、心が揺らぎます。CさんもAさんのことが前々から気になっていたようで、まんざらでもない様子です。
Aさんは恋人であるBさんに罪悪感を抱きながらも、Cさんと何度かデートを重ね、Bさんに内緒で深い仲になってしまいました。もちろんBさんはこの事実を知りません。
事例②
DさんはEさんと結婚していました。とても仲の良い夫婦でした。
しかしDさんはFさんという同僚女性が気になっており、妻Eに悪いと思いつつ心が揺らいでいました。
FさんはDさんが既婚だと知っており、自分に対するそれとない誘いや好意を受け入れてはいませんでした。
しかしDさんがあまりに熱心に誘うため、段々とDさんが気になり、終業後にデートを重ねるようになりました。
Dさんは妻Eさんに仕事だと嘘をつき、何度もFさんと泊まりがけで旅行にも行っています。
この二つの事例のうち、どちらが「浮気」で、どちらが「不倫」なのかわかりましたか?
二つの言葉の境界線は「ある部分」に着目すると簡単にわかるのです。
浮気と不倫の境界線とは
「浮気」という言葉は一般的に既婚・未婚問わず使います。とても広い意味の言葉です。対して「不倫」は既婚の人の浮気に対して使う言葉です。
片方が未婚でも相手が既婚であれば不倫になります。また、既婚同士の浮気も不倫になります。
不倫は「既婚」がキーポイントになるのです。
①の事例では三者とも未婚ですから広い意味の言葉である「浮気」を使い、②の事例では既婚者が浮気関係に混じっていますので「不倫」を使います。
不倫の方がより狭い範囲で使われる言葉であると言えるでしょう。
ただ、ニュースを見ていると、不倫も浮気も同じように使っていることがあります。
小説やドラマを見ていても、既婚者が浮気関係に混じっているのに浮気という言葉が使われていることがあります。
二つの言葉には境界線があるのですが、絶対にこの通り使わなければいけないというわけではありません。赤や緋、紅のように微妙なニュアンスでも使われることがあります。
既婚未婚問わず恋人同士の片方が他の異性に走ることを浮気といい、その中でも当事者に既婚者が含まれている場合に不倫という言葉を使うという境界線はあるのです。
ですが、厳格に使われているわけではありません。
皆さんも「AさんとBさん(既婚)が浮気だって」と言われても、十分に意味を理解することができますよね。日常的にはさほど気にして使い分けられていないという現状です。
法律には「浮気」と「不倫」はない?
ここからは少し話が変わります。
法廷などの法律を使う場では、果たして「浮気」と「不倫」はどんな使い分けをされているのでしょう。
実は、法律において「浮気」という言葉は使いません。「不倫」という言葉も法律には出てきません。法律で使われている言葉は「不貞行為」といいます。
夫の浮気(もしくは不倫)が原因で妻が離婚したいと考えたとします。しかし、話し合いをしても夫は離婚に応じてくれません。
調停をしたのですが、話が上手くまとまらず、最終的に妻は離婚を求めて裁判を起こしました。
法的に重要なのは「不貞行為に該当するか」です。
世間一般的には夫が妻以外の異性とレジャーランドに二人きりでデートに行くのは、たとえそれが肉体関係を伴わないとしても浮気と認識される可能性が高いと言えます。
しかし法的な判断において重要なのは、世間一般が浮気と認識するような事実があったのかではなく、「不貞行為の基準」なのです。
たとえ夫が妻以外の女性とデートしたとしても、それが一度きりで、しかも肉体関係を伴わないのであれば不貞行為と判断されるのは難しいかもしれません。
また、もし何度か肉体関係があったとしても証拠がなければ「離婚事由の一つである不貞行為」と判断されるのは難しいことでしょう。
「法律においては浮気や不倫という言葉は使わず、不貞行為という言葉が使われる。そしてこの不貞行為の基準は世間一般の浮気や不倫の基準とは異なっている」
これから結婚する人や現在離婚を考えている人は覚えておきたい知識です。
最後に
浮気と不倫の境界線についてわかっていただけたでしょうか。
この二つの言葉には意味や使い方に違いがあるのですが、一般的にそこまで厳格に用いられているわけではありません。
赤や紅という似た言葉のように、時にニュアンスで使い分けられることがあります。「日本語は難しい!」と思ってしまいますね。
法律の中では、浮気と不倫は「不貞行為」という言葉に集約されます。結婚についての豆知識として覚えておきたいことです。